PHP文庫から出ているこの本は、以前買って読んでたのですが、チャリティーで20冊の本を寄附する際に差し上げた1冊でした。
今、スティーブ・ジョブスが亡くなって、本屋を探したときに、真っ先に目に付いたのがこの本でした。再びじっくり読んでみようと買いました。
基本的に、人が発した一言だけを切り取って、その人の人柄、生き方を理解するのは難しいと思います。このほかにも迷言や心にもないことを言っていて、それだけがクローズアップされているのかを判断するのは読んでいる自分ですから、そのときの気分で心に残る名言に感じたり、当たり前のように感じたりするもので、著者の目から見たまとめかたであるということを年頭に、さめた感じで読み返して見たいと思います。
多分、ジョブスにたいする共通の認識としては、何かを発明したすごい技術者ではないという点。そして、天才経営者でもない。すばらしいものになる素質のある技術を見出し、素晴らしいものに完成させるまで続けるという生き方ではないかと、この本の「はじめに」に筆者が書いていましたが、多分、その通りではないかと思います。
日本にはこうした人がなかなか現れなかったり、少なかったりするので、だんだん日本のものづくりが弱くなってきているのではないでしょうか。そういう風に考えると、ジョブスは日本が元気だった最盛期の町工場の社長さんのような気概と行動力を兼ね備えていたのではと思います。
こういう人が、国産製品として守られた世界にいると最近のニュースのように、1万人規模のリストラをしなければならない事態を引き起こしてくるのでしょう。私は外資系にいますから、こうした国産会社が優遇されている状況をずっと見てきました。大学のクラスでも1番、2番の人がこのような会社に勤め、定年まで守られていた時代もありましたが、今はそんな安定した職場ではないようです。日本の会社が今の事態になってしまったのは、物事の決定において封建的になってきたのではないかと言う点とチームが一丸となって目的に向かうと言う点が薄れてきているのではと思います。つまり、チームを引っ張るような人が少ないのではと思います。
この本で紹介されている言葉で、どれか1つを選ぶとすると、「私が好んでやまないウェイン・グレッスキーの言葉をご紹介します。『私が滑り込んでゆく先はパックが向かってくるポイントであり、パックがあったところではない。』アップルも同じことをつねに試みてきました。誕生のごくごく初期の頃からそうでした。そして、これからもそれに変わりはありません」
One more thing....
「いっしょに働く人材のクオリティ水準を高く保つこと、それが自分の仕事の1つだといつも考えてきた。それは私が個人として貢献できる数少ないことの1つだろう。Aプレーヤーしか要らないという目標を組織にしっかり植えつけようとするのだ。何につけ、世界のトップ人材に目をつけることはあとあと役に立つ」
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